DRINK ON EMPTY STMACH 005 - 4
2010年6月9日
飲むと死ぬ酒
飲むと死ぬを、ついに飲む
2002年1月3日 東アフリカ・ケニア 首都ナイロビのイーグル・アパートメント
「飲むと死ぬから飲むな」と言われてから9ヶ月、「電気が消えてもまだ飲む」話を聞いてから7ヶ月がたった、2002年1月3日、私の目の前には、チャンガーが置かれていました。
9ヶ月前に「飲むと死ぬから飲むな」と教えてくれたSさんは、私がケニアに入った時には、数年にわたるナイロビ暮らしを締めくくって日本に帰国していたのですが、彼女が在ナイロビの友人たち(日本人女性、みんなスワヒリ語ペラペラ)をメールで紹介してくれて、皆さんにたいへんお世話になりました。
そのうちの一人Nさんは、日本の旅行会社と契約してツアー客の現地案内をしている人で、とりわけお世話になったのですが、Nさんが知り合い(ナイロビの旅行会社で働いているルイヤ人のWさん)に頼んで、チャンガーを入手してくれたのです。
Wさんの生まれ故郷(ウガンダとの国境に近い村だと言っていたような)で作られた安全な原酒で、クリスマス 〜 ニューイヤーの里帰りの折に手に入れて、はるばるナイロビまで持ってきてくれたものです。
Nさんと、Nさんのところに居候しているもう一人のNさんと、三人で飲みました。
〔安全な原酒〕だとわかってはいるのですが、やはり怖いのです。グラスに注いだやつをストレートでキューッとあおりたいのに、それができない。死んだらどうしようと思ってしまう。
意を決してグイッとやろうとして、直前で思いとどまる、ということを何度か繰り返した後、舌先で嘗める程度のひとしずくを、恐る恐る口に含んでみました。
強い。
風味は……何かに似ている……蕎麦焼酎にこんな風味のやつがあった気がする。蕎麦焼酎に特有の風味ではなくて、こんなうまい蕎麦焼酎があるのかと思ったやつの風味に似てる。おっかなびっくりのひと嘗めなので、ホントはぜんぜん違う風味なのかもしれないけれど…。
妙にチビチビ飲んでしまう。グイッとあおってゴクリと飲み込みカーッと焼けてキューッと味わいたいのに、どうしてもそれができません。
「死なないように飲もう」と、どうにも小心なことをしてしまう。小者だなあ。
少量を皿に取りライターの火を近づけたら、それだけでいきなり燃え上がって、青白い炎を放った。 Nさんなど、とっくに元気よく酔っぱらい、サクランボをふたつ両の鼻の穴に呼吸の吸引力で引っ付けて両手でVサインをしており、もう一人のNさんはそれを私のデジカメで撮ったりなんかして、二人は度胸よく楽しんでいるのです。大物だなあ。
それでも私も少しずつ酔ってきて、いい気持ちになってきました。死なずにすみそうな気分になってくるし、〔電気が消える〕こともない。グイグイあおってキューッとやれるようになってきました。
うん、うまいじゃないか。つーか、原酒のチャンガーめちゃくちゃうまいぞ!