地球の全部で暮らしてみたい 『全額回収一生旅行』始末記編 000 - 1
2000年 夏のある日 〜 2001年1月4日まで
『全額回収一生旅行』
旅を終えて家に帰らずにすむ、簡単な方法。
なぜ人は旅を終えて家に帰ってしまうのか
尺物の岩魚。南信州・大鹿村の鹿塩川にて。 二十世紀の最後の年のことでした。
最初は単に「一年ぐらいの長い旅がしたいな」と思っていたのです。それがいつの間にか、『一生、定住しないで暮らせないものだろうか』に変わってしまいました。
『遊住』。住む家があって、毎日そこに帰るのではなく、家を持たず、定住せず、世界のあちこちを、一生、ずっと渡り住む。
どうしたらそんな暮らしができるのか、毎日さんざん考えて、私はついに、ある結論に達しました。
例えば、休みを取って、一週間ぐらい海外旅行に出かけたとします。この旅もあと数日で終わりという頃になると、もう少し旅を続けたいなあ、まだ帰りたくないなあ……という気分になりますね。でも、そう思っても、結局みんな帰ってしまいます。
「不思議だ。帰りたくないのに、なんでみんな帰るんだ?」
考えてたどり着いた結論は、こうでした。
「それは、帰る家があるからだ」
帰る家がなければ、帰らなくてもよい。というか、帰れません。自動的に、旅が一生続いてしまう。
「そうか、そうだったのか! 帰る家がなきゃぁいいんだ!」
「お前、バカか」と、お思いでしょうね。
でも、これを思いついた時の私は、〔大発見〕をしたつもりになっていたので、自分をバカだと思わずに、「天才だ!」と思ってしまいました。
そうして、実行に移してしまったのです。