DRINK ON EMPTY STMACH 003 - 7
2010年1月4日
究極の読書考
世界で唯一の幸福な読者
幸福な読書なのか? 神級の超絶職能なのか?
松本清張・専属速記者のものすごい話で、3杯目。
のどか極まりない、谷崎潤一郎の口述筆記
福岡さんは、谷崎潤一郎の小説を口述速記したこともあったそうです。
筆者は谷崎潤一郎の筆の進みの速い・遅いは知らなかったのですが、志賀直哉がかなりの遅筆だったことをどこかで読んだ覚えがあったので、「あの時代の小説家は1日に原稿用紙4〜5枚の執筆に艱難辛苦していたのでは?」とお尋ねしたところ、こんな答が返ってきました。
「1日に原稿用紙4枚くらいのペースで、さんざん悩んで少しずつ進むという感じ」
「速記文字を使わないで、普通の文字で書いていっても、まだ時間が余ってヒマなくらい」
「原稿用紙の前でうなってる谷崎さんを見ながら、『なんでこの人は速記なんか雇うんだろう?』と、不思議でしょうがなかった」
楽しかったなあ、あの時の取材。筆者が福岡隆氏にお会いしたのは、取材の折とラジオにご出演いただいた当日の都合二度きりで、実質は一期一会なのですが、希有な体験をおすそわけしていただいたような思いがあります。それはそれは楽しそうに語ってくださったあの時の福岡さんのお姿を今もときどき思い出しては、反芻して楽しんでいるのであります。
「人間・松本清張 - 専属速記者九年間の記録」(1968年)
福岡さん自身による著書には、もっと具体的なエビソードがいっぱい!