DRINK ON EMPTY STMACH  001 - 2

2009年11月16日

冗談みたいな動物の話で、一杯目

 人間に例えると、身長1メートル70、タマキン1メートル30。

 体の実寸は哺乳類でいちばん小さいのに、精子の実寸は哺乳類でいちばん大きく、なんとシロナガスクジラのよりもでかい。

 では、生まれてくる赤ちゃんは、でかいのか小さいのか? そもそもなに考えてそんなヘンなことしてんだ?

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生殖だけでなく、食と睡眠もとびきりヘンてこ


 ハニーオポッサムの極端なところは、食生活と睡眠にも及びます。

 食べているのは、花粉と蜜だけで、これも哺乳類で唯一なのだとか。この部分を読んだ時は、睾丸が体の4分の3云々……よりもびっくりしました。体長4センチ、カブトムシより小さいといっても、哺乳類です。哺乳類というのは非常に高燃費な生き物で、花からじかに花粉や蜜など食っていては命を維持できるわけがないのです。(ちなみに和名はフクロミツスイ)

 その証拠に、ハニーオポッサムは、エネルギー消費を極限まで節約するため、眠る時は普通の睡眠ではなく「昏睡」。昏睡とは、Wikipediaによれば、外部からどのような刺激が加えられても、脊髄反射以外の反応がない、意識障害の中でもっとも重い状態。要するに、医師や看護師が大わらわで治療に当たる、死にかなり近い状態なわけで、死に近い分エネルギー消費も非常に少ないのだろうかと想像するのですが……。

 生殖、食、睡眠、動物の三大欲求すべてにおいて極端。花粉と蜜で貯めたわずかな生命エネルギーを、普通に眠らず昏睡してまで節約して体の4分の3もある睾丸に送り、体長40メートルのシロナガスクジラのより大きな哺乳類最大の精子を作る、たった4センチの哺乳類。これを企業戦略や軍事戦略や国家戦略に置き換えたらどうなるんだろうなどと思ってしまうのですが、著者の川端氏はそのような野暮は書かずに、「進化のビデオテープを5500万年ほど巻き戻して同じ条件でリスタートしたら、ハニーオポッサムは再び現れるのだろうかと考えると、現れないのではないかと思う」と書き、このとびりきへんなやつを慈しんでいるのであります。

 ハニーオポッサム、こやつはいったい何を考えて生きているんだろうかと、本の写真をつらつら眺めると、うはははは、著者の川端氏の手のひらの上で「昏睡」していたりするのです。この状態では何も考えてないんだろうなあ……。昏睡状態なのに、なんで幸せそうに見えるんだろう?

 この他にも、世界各地の「へんてこな動物」がいろいろ紹介されており、たいそう楽しめる本です。マダガスカルの原猿類の項には、「サルのストライクゾーンを外したサル」といったナイスな文章が添えられていて、笑いました。1年半後、マダガスカルで実物を見て、さらに笑ったのでありました。

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